中古車を個人間や知らない相手と取引する際、もっとも被害が多いのが「手付金(デポジット)詐欺」と「偽エスクロー詐欺」です。実際に車を見る前にお金を要求されたり、安全な第三者預託(エスクロー)を名乗る偽サービスに誘導されたりするケースが増えています。仕組みを知っておくだけで、被害の大半は防ぐことができます。
手付金詐欺の典型的な手口
魅力的な価格の車がオンラインの掲示板やSNSに掲載され、興味を示すと「他にも複数の希望者がいるので、確保するには先に手付金を送ってほしい」と急かされます。売主は遠方に住んでいる、転勤中、海外にいるなどの理由をつけて、実車を見せることを避けようとします。お金が振り込まれた瞬間に連絡が途絶える、あるいは車自体が最初から存在しないというのが典型的な結末です。
偽エスクローサービスの罠
「安全な取引のために第三者機関(エスクロー)を通しましょう」と提案されるケースも多くあります。これ自体は本来、買主と売主の双方を保護するための仕組みですが、詐欺グループはこれを悪用し、本物のエスクロー会社を装った偽サイトを用意します。買主がそのサイトに代金を送金すると、サイトも運営者もそのまま消えてしまいます。売主側から「このサイトを使ってください」とURLを指定してくる場合は、そのサイトが本当に独立した第三者機関なのか、買主自身が別の経路で確認する必要があります。
見分けるべき危険な兆候
- 実車を見る前、あるいは試乗前に代金や手付金の支払いを強く求められる
- 相場より明らかに安い価格が提示されている
- 売主が対面での確認や電話での会話を避け、チャットやメールだけでやり取りを進めようとする
- 「他の人が今すぐ買いたいと言っている」など、判断を急がせる言葉が繰り返される
- 指定されたエスクローサイトが聞き慣れない名前で、検索しても運営会社の実態がはっきりしない
- 銀行振込やギフトカード、暗号資産、国際送金サービスなど、後から取り戻しにくい支払い方法を指定してくる
- 車両登録証や所有者情報の確認に応じない、または車体番号を教えたがらない
安全にお金を渡すための基本原則
まず何よりも重要なのは、「現車確認をしてから、そして所有権の移転手続きと支払いを同じ場のなかで行う」という順序を守ることです。写真や動画だけで契約を進め、先に代金の一部でも送金するという流れ自体が、詐欺の入り口になりやすい点を覚えておきましょう。
- 可能な限り、車を保管している場所に足を運び、実際にエンジンをかけ、車体番号やナンバーを目視で確認する
- この確認サービスのナンバープレート検索や利用者レビューを使い、車両情報や過去の取引に関する評判をあらかじめ調べておく
- 手付金を払う場合でも、金額は最小限にし、必ず受領書や簡単な覚書を作成し、双方の氏名・連絡先・車両情報・金額・日付を明記する
- 第三者機関を使う場合は、売主から指定されたサイトではなく、自分自身で信頼できるサービスを探し、その運営会社の実在性や利用者の評価を自分で確認する
- 大きな金額は、対面での引き渡し時に、追跡や記録が残る方法(銀行の窓口を通じた振込など)で行い、現金の受け渡しは最小限にする
- 相手が「今すぐ決めないと他の人に売る」と急かしてきたら、一度距離を置いて冷静に判断する
契約書と所有権移転の確認
お金を渡す前に、必ず売主が実際の所有者であることを確認しましょう。車検証や登録情報に記載された氏名と、取引相手の身分証明書の氏名が一致しているかを見比べることが基本です。もし代理人が対応している場合は、委任状など所有者本人の意思を示す書類の提示を求めるべきです。所有権移転の手続きが完了するまでは、全額を支払わない、あるいは支払いを一定期間留保できるような取引方法を選ぶことも有効です。
万が一だまされてしまったら
送金してしまった直後であれば、まず利用した銀行や決済サービスに連絡し、取引の停止や取り戻しができないかを確認します。時間が経つほど資金の回収は難しくなるため、少しでも不審に感じた時点ですぐに行動することが重要です。また、警察や消費生活に関する相談窓口に早めに連絡し、被害の経緯を記録として残しておくと、後の対応がスムーズになります。同時に、利用した掲示板やサービスの運営側にも状況を報告し、同様の被害が広がらないようにしましょう。
まとめ
手付金詐欺や偽エスクロー詐欺の多くは、「急かす」「現車を見せない」「聞き慣れない第三者サイトを使わせる」という共通パターンを持っています。焦らず現車を確認し、所有権と支払いを同じタイミングで完了させる取引の順序を守れば、被害のリスクは大きく下がります。少しでも違和感を覚えたら、その取引から一度立ち止まって確認する習慣を持つことが、最も確実な自己防衛になります。